国民投票法案に見る洗脳政策
国民投票法案(←条文全文はここ)について書いていこうと思っている。上程された国民投票法案について、詳細に検討がなされた意見書や声明などは現在のところとても少ない。網羅的に批判を加えているのは、現在のところ自由法曹団の意見書だけのようだ。
その意見書を踏まえて少し思ったことを書いてみる。この国民投票法案で今一番問題となっているのは、CM広告の扱いについてだ(公務員や教育者の運動制限も問題だが、この規制が問題であることは比較法的にみてもごく当たり前なのでここでは書かない。)。ちょっと経過を説明すると、国民投票法案は、2000年→2004年→2006年と修正されてきたのだが、2006年4月までは、メディア規制が設けられていた。その内容もまたすごいもので、要するに新聞やテレビなどのマスメディアなどは、論説や社説などで改憲案について意見を書いてはいけない、違反した場合には懲役刑とするという規制を中心とするものだった。当然のようにメディアから強い反対に遭い、4月にはこれを自主規制と言う形にしたが、ここで自民党は、全く違う方向へ突然方針転換した。
それが、CMを利用した国民の大洗脳作戦だ。
与党国民投票法案では、憲法改正広報協議会という組織をつくりそこが、改正案についてCMを含む広報を一手に行うことになっている。この広報協議会は、「各政党の議席数に応じて」、各議院10人づつが選ばれることになっている。すると、現在の政党の議席数を考えれば分かるとおり、改憲派の自民・民主だけでほぼ10人全てが埋まってしまい、護憲派の共産・社民からはよくて1人づつしか選ばれないこととなる。
この広報協議会が、放送や新聞などのマスメディアを無償で利用する場合の放送時間や新聞の寸法、回数などを決めることになる。しかも、この放送時間などを決める際にも、「議席数に応じる」こととされているのだ。議席数のたくさんある自民党は、長く何度も、良い時間に放送がなされ、新聞にも大きく出され、改憲の素晴らしさを垂れ流し、一方で議席数の少ない共産・社民のために、護憲派の放送や記事はほとんど目に見えない訃報レベルのベタ記事になりかねないのだ。インターネット時代といえども、テレビの影響力にはまだとても追いつけない。この法案のままで国民投票がなされたときには、その結果は目に見えているというほかないだろう。そして、政府の目的はそこにあるのだと思う。
この広報をめぐる問題は、6月1日の衆議院の審議で参考人となった天野祐吉氏(NEWS23 コメンテーターなどで有名)が、改憲賛成か反対かという問題なのに政党議席数によって、広告利用に差を設けることに疑問を訴え、さらに「テレビCMは使い方次第でマインドコントロールの手段になる。法的規制ではないが、CMが公平に行われるような共通のルールを作ってほしい」として改正案の問題点を指摘している。全く同感だ。是非時間があれば、会議録も読んでみてもらいたい。天野氏は、また、自民党の郵政民営化でのCM作戦について言及し、「あれは上手くやりましたね」と言い、実際にはあのCMが決定的だったと言う。
ここで思い出すのは、昨年の郵政民営化選挙で、自民党政府が行った広報戦略の書類が流出した事件だ。有限会社スリードとオフィスサンサーラ(契約金としてスリードに1億5000万円のお金が流れていたが、この会社が郵政民営化選挙直前に設立された竹中平蔵大臣との繋がりをもつ会社であることが判明し問題となった)と言う会社に、自民党政府が発注し、選挙広報についての戦略をまとめた内部資料が見つかったというものだった。
この内部資料の中で、小泉支持層はIQ軸(EQ, ITQ)が低いからそこを狙った作戦を展開しろと図解付きで提案している。そしてその結果が、無内容な叫びを続けるワンフレーズポリティクス(その後のじゃんけんほいサイトウケン作戦は失敗したが)だろう。自民党は特にそうだが、国民のためを考えているのではなく、なるべく考えさせないように、CM・広報を自分たちで独占し、洗脳していこうとするのだ。平気で国民に対して「IQが低い層」がターゲットなどと言われてまで自民党に投票する方たちは悔しくはないのだろうか。
小泉自民党にIQが低いと言われターゲットにされた方たちは、上記の計画書によれば「主婦&子供、シルバー層」だそうだ。若年層へのターゲットは防衛庁も力を入れており、「萌え系」マンガの防衛白書なんて言うものまで作っている。格差の犠牲者である若者や老人たちは、今の政治に不満を持っているのだろう。それで「改革を止めるな」という力強い発言にこの不満を解消してくれる変革を期待したのだろうか。しかし、その「改革」はさらに、若者や老人を下へ下へ導くための「改革」だったことを忘れてはいけないだろう。













Comments
CMについて明日の記事にしたいので、引用させて頂きながら書いているのですが、どこも大事で全部読んでいただきたいので全文転載させていただいてもよろしいでしょうか?
急ぎませんのでお暇なときにお返事ください。よろしくお願いいたします。
ざっと読ませていただきました。法律家による心強いブログですね。今後も応援いたします。
実は私、地裁で無罪、高裁で有罪とされた「立川反戦ビラ入れ裁判」について、判決文や世に流通しているオピニオンを私なりに勉強してまとめの文章を書いた時に、これからの世の中、法律の知識も持つにこしたことはないと思いましたので、こういうブログはたいへんに参考になります。またこちらに寄らせていただきますのでよろしくお願いいたします。今日はごあいさつだけですが。m(__)m
もちろん転載大歓迎です。これからももし使える記事がありましたらどんどん転載してください。
国民投票法案については、他にも国民の過半数の意義や無効訴訟の対象から広報協議会が外されていること、憲法改正審査会の問題などがありますが、一番のキモはこのCMを利用した大宣伝にあると思います。
顔文字が苦手なため感情が表に出ないかもしれませんが、転載は大歓迎です。是非お願いいたします。
医療制度改革法について何も言えなかったこともあり、オールマイティに全てを網羅する能力はないですが、少しだけでも情報が発信できればと思っています。
弁護士にもいろいろいます。右派もいれば左派もいて、無関心そうもいます。ただ、多くの弁護士は、今の新憲法草案については、習ってきた憲法の概念を根底から覆すことは分かっています(そうでなければ司法試験受かっていません)。恥ずかしい話ですが、このような分かっているのに何も言わない弁護士たちを元気づけるのは世論に頼るしかないのかと思い始めています。今後とも情報をTBしていただけると幸甚です。
知っていることは伝えて逆に知らないことを教えていただくそんなブログにできるといいなと思っております。
ちなみに立川の高裁判決は、私の司法修習の教官の中川裁判官で、思うところありすぎです。普段はとてもいい人なのですが...。あの判決文はいいすぎですよね..。
では、これからどんどん転載させて頂きますね。
弁護士といっても、国民投票法案や共謀罪など自分のお金に直結しない法律には殆ど興味を持ってない人がほとんどです。まして検察官や裁判官なんて法案の存在すら知らないかもしれません(忙しいし)。
弁護士は、委員会制度というのがあって、一人につき一つの委員会に所属する義務がありまして、そこで多少プロボノ活動に関わるという程度なのが実際です。他の弁護士に憲法がらみの話なんかしてしまうと、「そういうのやめて」と敬遠されてしまうこともあります。
ただ、全国各地で弁護士9条の会というのも立ち上がり始め、徐々にではありますが私たちの狭い職業世界でも変化が起こりつつあるように思います。
今後ともTB・コメントいただきご教授下さいませ。
インターネット上で、言論・表現の自由を掘り崩すような論調に勢いを与えているだけでも罪作りな高裁判決でした。
きびしい言い方になってしまいましたが、正直な気持ちです。
この週末、また憂鬱な裁判関係の新聞記事が。
一つは、2001年8月の小泉首相の靖国参拝を政教分離の観点から問うた裁判の最高裁判決(今井功裁判長)で、政教分離の問いを逃げて、「法的利益の侵害はなかった」として原告の訴えを退けたという話。
もう一つは、葛飾区の共産党ビラ配りで住居侵入罪に問われた男性への論告求刑公判が6月23日、東京地裁(大島隆明裁判長)であった、という話。検察側は「政治的意見の表明であっても他人の権利を侵害することは許されない」と主張して罰金10万円を求刑したとのこと。
前者は、裁判所が憲法判断をしないなら、裁判所と憲法の存在意義そのものが問われることになるという感想を持ちましたし、後者も、立川反戦ビラ裁判で感じたのと同様の感想を持ちました。
法律家の間では、こういう裁判についてどういうふうに話題になるのか、気になります。
話題がもともとのエントリーから離れていきますが(笑)、一般人の疑問としてお聴きいただければ幸いです。
右翼の政治喧伝は笑って取り締まらず、平和を訴える言論は取り締まる今の世の中が少しおかしいと気づくイマジネーションを持てないものでしょうか。こういう政治的言論を刑事罰をもって取り締まることの危険性を考えることが、憲法を背景に法体系を考える本来の法律家の仕事なのですが、誠に申し訳ない話です。まだ終わった訳ではないですが、立川テントのように高裁に上がっていけば行くほど、こういう基本を忘れた裁判が行われているのが現状です。
ただ、裁判官はともかく、弁護士レベルではまだまだこういう事態の危険性に気づくことのできる人たちがまだいて、しかもそれなりに数もいます。司法を変えることができるのは、市民の認識と声だけだと思います。あきらめずにがんばり続けることが重要かと思っています。
ずいぶん前にトラックバックを受けていたのですが、
長く充電していましたので、ご挨拶が遅れてしまいました。申し訳ありません。改憲をやると宣言した安倍に対して怒りと憤りと危機感がそうとう高まっています。
ご一緒に改憲をストップする世論をつくりましょう。
なんとなくやメディア操作に流されてではなくて、ちゃんと市民が選択できるそんな情報を発信できればと思います。
今後とも宜しくお願いいたします。
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